税務調査

税務調査の対応Q&A

Q1
税務調査には、必ず応じないといけないのでしょうか?
Q2
税務調査の中で、税務調査員の質問できる権利(質問調査権)は無制限に認められているのですか?
Q3
事前に調査をしますという連絡もなく、突然税務調査員が調査をしたいと訪問してきたのですが、どうすればいいでしょうか?
Q4
税務調査員は、いつでも質問検査権を行使することができるのですか?
Q5
「指導なのでご協力お願いします。」という来訪があった場合、どう対処すればいいのでしょうか?
Q6
事前通知が納税者にあった場合には、どのように対処したらいいのでしょうか?
Q7
調査日時の連絡があったとき、都合が悪いと延期することはできるのでしょうか?
Q8
調査にきたいと税務調査員から連絡を受けたので、調査の理由を聞いたのですがその開示がないのです。どのように対処したらよいのでしょう?
Q9
金融機関の調査って、自由にできるのでしょうか?
Q10
納税者の許可がなくても、金庫や引出し等を調べることができますか?
Q11
病院等の調査の場合、カルテは自由に調べることができるか?(弁護士・司法書士等の事件簿は?)
Q12
調査官が権力的な言動をとったときには、どのように対処したらよいのでしょうか?
Q13
税務調査員は、自由に帳簿書類等を持ち帰ることができるのでしょうか?
Q14
家族事業専従者や従業員も質問検査権の対象となるのでしょうか?
Q15
銀行や取引先などに対する反面調査はどのような場面に認められるのでしょうか
Q16
税務調査員は、管轄以外の地域にある取引先に反面調査に赴くことはできるのでしょうか?
Q17
質問検査権の行使が法的限界を超えた場合の調査は無効でしょうか?
Q18
税務調査員が、勝手に事務所などに入ることは認められているのでしょうか?
Q19
税務調査に第三者の立会いは認められるのでしょうか?
Q20
税務署員が調査の終了後、修正申告書を早めに提出するようしきりに言ってくるのですが、どのように対処したらいいのでしょうか?私としては、調査の結果について検討している段階なのですが。
Q21
税務署から提出要求された法定外の「照会文書」には、どのように対処したらよいのでしょうか?



Q1税務調査には、必ず応じないといけないのでしょうか?
A1必ずしも、応じなければいけないというわけではありません。
ただ、正当な理由(病気療養中等)がなく拒否した場合には、罰則が適用される場合があります。

われわれが、日常的に接するのはあくまで、課税処分のための調査であり、任意調査と呼ばれるものです。マルサといわれる国犯上の調査権は、脱税の摘発であり、強制調査が可能です。

税法という法律においては、国税庁の職員または税務署の職員は、税に関する調査について必要があるときは、法人または個人に質問をしてその帳簿書類その他の物件を検査することができる。と規定されています。ここにいう調査は、あくまで任意調査です。任意調査といえども、納税者が調査に応じないときには、法律上一定の処罰がされます。

病気や、海外出張など正当な理由があれば、調査を延期することはもちろんできます。
Q2税務調査の中で、税務調査員の質問できる権利(質問調査権)は無制限に認められているのですか?
A2あくまで、任意調査ですから無制限ではありません。

当然に、憲法35条に住居侵入、捜索及び押収に対する保障が規定されており、また憲法38条に自白の不強要が規定されています。

したがいまして、時・場所・方法・範囲などについては一定の法的限界が存在することになります。その法的限界を超えるような質問検査権は違法ということになりますので、無制限に認められるということはありません。
Q3事前に調査をしますという連絡もなく、突然税務調査員が調査をしたいと訪問してきたのですが、どうすればいいでしょうか?
A3事前通知なしの税務調査が法律上禁止されているわけではありませんが、営業上の利益を害するなどの可能性は否定できません。

したがいまして、理由を付して断るべきです。あらためて、調査の日時、場所等を打合せをしてください。
Q4税務調査員は、いつでも質問検査権を行使することができるのですか?
A4税務調査は、確定申告書の提出期限後でなければできません。

税法という法律において、調査対象者は、「納税義務がある者、納税義務があると認められる者」と規定しています。したがいまして、所得税や法人税は申告納税方式(自ら計算をして申告、納税をする方式。役所が決める税額を決める方式は、賦課課税方式といいます)であって、確定申告書を提出してはじめて納付すべき税額が確定することになります。この時点で納税義務がある者となるのです。

したがいまして、申告書を提出した事業年度について調査することはできますが、調査時の現金の調査や調査のときの進行事業年度については、帳簿等の調査をすることができません。

したがって、もし現在の事業年度について聞かれても調査に応じる必要はありません。
Q5「指導なのでご協力お願いします。」という来訪があった場合、どう対処すればいいのでしょうか?
A5指導していただくときは、こちらからお伺いしますので、結構ですとお断りしてください。

指導という名目で、事実関係を調べたり、なんらかの働きかけをしたりすることが目的である場合が多いです。したがって、課税権の行使の発動を意識したものである可能性があると考えられます。
Q6事前通知が納税者にあった場合には、どのように対処したらいいのでしょうか?
A6納税者の方に、税務調査をしたい旨の連絡があった場合には、「税理士に相談して、税理士の方から調査の日時、場所等を返答してもらいます。」と答えてください。

税理士は、納税者の代理人ですので、納税者に代わって税務署へ連絡をしてもらうようにしてください。
Q7調査日時の連絡があったとき、都合が悪いと延期することはできるのでしょうか?
A7延期の申出はできます。調査中に延期もできますし、延期については調査拒否ということにはなりません。

税務署から事前に税務調査の日時を指定せずに調査をすることが、禁止されているわけではありません。ただ、営業に支障をきたすのであれば、当然営業を優先してください。
Q8調査にきたいと税務調査員から連絡を受けたので、調査の理由を聞いたのですがその開示がないのです。どのように対処したらよいのでしょう? 
A8税法における税務調査員の質問検査権は、「必要があるとき」のみ行使ができる規定になっています。
したがって、調査理由がない場合には、税務調査はできないことになっています。

以前に、このような事例がありました。
納税者に税務調査の理由が開示されないことについて、東京高等裁判所は、「税務調査員の質問検査権は、所得税の調査が必要なものであることを有し、適正・公平な課税を実現するために、その必要性が合理的に認められている場合でなければならないのであって、税務調査員の個人的恣意性は許されない。」と述べられていることからも理解できます。(東京高裁昭和44年(う)第1759号判決文)
Q9調金融機関の調査って、自由にできるのでしょうか?
A9納税者本人を調査した上で、さらに客観的に金融機関を調査する必要がある場合に限り認められます。

もし、税務調査員が納税者に接触することなく、直接金融機関に調査に行けば、その納税者の金融機関に対する信用を失墜することにもなりかねません。 重要な問題ですので、納税者側も十分注意して対応するべきです。
Q10納税者の許可がなくても、金庫や引出し等を調べることができますか?
A10 一般の税務調査は任意調査ですから、納税者の承諾がなければ金庫や机の引出しを開いたり、現金や預金通帳の検査等を行うことはできません。

もし、税務調査員が納税者の承諾なしに金庫や引出しを調べようとした場合には、抗議してとどまらせるべきです。

しかし、悪質な納税者に対して行われる税務調査は裁判所へ告発する場合もあります。そのため、当初よりこの脱税等を対象とした調査は、税務調査とはいっても捜査押収等に関しては、裁判所の許可を得て行われる調査ですから、刑事事件の際の捜査に近い性格を有しています。
Q11病院等の調査の場合、カルテは自由に調べることができるか?(弁護士・司法書士等の事件簿は?)
A11医師、弁護士、税理士、司法書士等には、それぞれ医師法等により守秘義務があり、これに違反した場合には刑事罰が課せられている。したがって、任意調査たる質問検査権では、これらは自由に調査することはできない。

医師法の施行規則第23条に列挙されているように、カルテは「診療を受けた者の住所・氏名・性別及び年齢」、「病名及び主要症状」、「治療方法」(処方及び処置)、「診療の年月日」が記載するのに必要な事項です。その結果、医師は診療の過程で、信頼関係を基礎にしてここの患者の「秘密」を握ることになります。

つまり、医師のカルテに対する秘密保持義務とは、患者と医師の信頼関係を担保するためのものです。
Q12調査官が権力的な言動をとったときには、どのように対処したらよいのでしょうか?
A12税務調査員に権力的な言動があった場合には、注意を促して是正を求めるべきです。

それでも、悪質な言動が見られる場合には、直ちに税務署の責任者(税務署長等)に電話で連絡して、是正を求めるべきです。

一般の税務調査における質問検査権においても、強制調査の場合のように強力な権限を持っているかのような税務調査員の権力的言動の見受けられる場合があります。もちろん、これは誤りで、税務運営方針においても、納税者の諸事情に最大限配慮して調査しなければならない旨、規定されています。
Q13税務調査員は、自由に帳簿書類等を持ち帰ることができるのでしょうか?
A13税務調査員は、自由に帳簿等を持ち帰ることはできません。もし、税務調査員が、帳簿書類等を持って帰りたいと思った場合には、必ず納税者にその旨を申出て、納税者の承諾を得なければなりません。

税務調査員には、帳簿書類を税務署内に留置させる権限はありません。
したがって、帳簿の持ち帰りを拒否してもかまいませんし、それが罰則の対象になることもありません。

ただし、調査の負担を少なくする等の理由から、書類の持ち帰りに承諾する場合もあります。
Q14家族事業専従者や従業員も質問検査権の対象となるのでしょうか?
A14その納税者の事業に関して、家族事業専従者や従業員も自らが担当している範囲においては、質問検査権の対象となりますが、それ以外のことは対象外です。

質問検査権は、納税者の事業行為の結果生じた納税義務を対象としていますから、その事業上の行為すべてが質問検査権の対象となります。
したがって、家族従業員や従業員もその事業上の仕事を行った範囲内で質問検査権の対象となります。
Q15銀行や取引先などに対する反面調査はどのような場面に認められるのでしょうか?
*反面調査とは、事業上の取引先や金融機関に対して取引内容を確認することです。
A15反面調査に関する質問検査権の行使の範囲は、厳格に解されるべきですから、納税者本人の調査を行ったにもかかわらず、その者の実態が把握できなかった場合や、納税者が調査に非協力的な場合に限り行使されるものです。

納税者にとっては、取引先や銀行に対する信用は、営業上大切な財産です。しかし、反面調査が行われますと、これら取引先に迷惑がかかるだけでなく、納税者の営業上の信用力にも影響してきます。

したがって、反面調査は客観的に見てやむをえないと認められる場合に限って行わなければならないものです。
Q16税務調査員は、管轄以外の地域にある取引先に反面調査に赴くことはできるのでしょうか?
A16税務署の調査官が法人税に関する調査を行う場合には、その税務署の管轄地内にある法人に対してしか調査することができません。

もし、その法人をどうしても調査したい場合には、その法人の納税地を管轄する税務署に調査の委託をしなければならないのです。
Q17質問検査権の行使が法的限界を超えた場合の調査は無効でしょうか?
A17質問検査権も法律に基づいて調査官に付与された権限のひとつです。
したがって、質問検査権が合法的に成立する要件を失した場合には、当然にその権限自体に法的な効力がなくなりますから、その質問検査権自体は無効となります。

質問検査権の法的限界を認識することは困難といえます。ただ

(1)一般の調査は任意調査であることから、調査官は何をするにしてもすべて納税者の承諾を得なければならないこと、

(2)調査の受忍による納税者の負担は社会通念上相当な範囲にとどまるものであること、は明らかです。

もし、質問検査権の行使が法的限界を超えた場合には、納税者がそのことに起因して心身に損害を受けたのであれば、国家賠償法に基づき損害賠償の請求をすることができます。
Q18税務調査員が、勝手に事務所などに入ることは認められているのでしょうか?
A18質問検査権の中に立入権(勝手に事務所等に入る行為)は、認められていません。税務調査員は、納税者の承諾を得ずに建物の中に入ることはできません。

中小事業者の場合には、自宅と事業所とが一体的な構造となっている場合があります。そのような場合の税務調査では、よく税務調査員が自宅部分へ立ち入ろうとするケースが見受けられます。

質問検査権には、立入権が認められていませんので、そのような税務調査員の行為は問題があります。自宅部分は、非事業用部分でもありますから、質問検査権の対象外です。このような場合には、調査官の自宅部分への立入りを拒否すべきです。
もちろん、自宅部分への立入りを拒否したとしても、質問検査権の対象外ですから、その拒否が質問検査権の受忍義務違反であるとして、罰則の対象になることもありません。

以前の判例にこのような事例がありました。

ある税務調査員が、あらかじめ納税者と調査日時の打合せをしておいたために、約束の日時に打ち合わせておいた納税者の事業所に臨場しました。しかし、納税者は不在でした。調査官は、本当に不在であるかを確認するとして、鍵のかかっていなかった納税者の事業所に立ち入りましたが、このことが問題をなった事案がありました。

裁判所は、質問検査権に立入権は認められていないとして、調査官のこの行為は違法行為であるとの判断を下しています。
Q19税務調査に第三者の立会いは認められるのでしょうか?
A19単なる立会いだけならば認められます。 しかし、納税者にかわって、税務調査員に税務に関する主張や陳述という税務代理行為をすると税理士法に抵触する場合があります。

あるいは、その立会っている者が調査の進行に妨害となるような言動をとった場合には、質問検査権に関する罰則の問題が生じます。

税理士あるいは弁護士は法律上、納税者の税務行為に関する代理人となっていますので、納税者から調査の立会いについての委託があれば、納税者にかわって主張陳述することができます。

また、税務調査員も納税者のこのような税理士あるいは弁護士の代理人としての立会権を拒否することはできません。
Q20税務署員が調査の終了後、修正申告書を早めに提出するようしきりに言ってくるのですが、どのように対処したらいいのでしょうか?私としては、調査の結果について検討している段階なのですが。
A20税務行政において、修正申告書の提出を促すような行政指導は、事実行為としての行政指導です。しかし、実際には法律行為の効果を生じさせています。

どういうことかといいますと、自ら修正申告をするということは、税務署員が調査を行ったことによりなんらかの指摘をした場合、その指摘について納税者の方が間違いを認めて訂正したといった自発的な行為をみられてしまいます。

ということは、自ら過ちを認めたことになるため、その税務署員の言い分が正しいということになり、その後疑問等があっても、事後の救済措置がなくなってしまうのです。
つまり、納税者が税務署員の言い分につき、不服の申立てや訴訟を行うことができないことになってしまうため、十分な注意が必要です。
Q21税務署から提出要求された法定外の「照会文書」には、どのように対処したらよいのでしょうか?
A21法定外文書は法律的な根拠のない書面です。ですから、その書面を提出する、しないは自由です。もちろん、提出しないことに対する罰則もありません。

税務署への提出書類は、法律によりその提出が義務付けられているものと、なんら法律上の根拠のないものとがあります。

前者を法定調書といい、後者を法定外調書と呼んでいますが、「照会文書」はこの法定外文書に該当します。

たとえば、法定調書には給与を支給した際の源泉徴収票や利子や配当を支払った際の支払調書等があります。また、法定外調書には土地や建物を売却した際に送られてくる各種のお尋ねや事業上の売上げや経費の取引状況に関する資料せん等があります。
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